「昔と同じケアをしているのに、なんだか髪がパサつく……」
「年齢に合わせてシャンプーを変えるべき?」
「高いトリートメントを使っても、変化が感じられないのはなぜ?」
そんな疑問を抱えたことはありませんか?
実はお肌と同じように、私たちの髪や頭皮が必要としている栄養や成分も、年齢とともに大きく変化していきます。
20代の瑞々しいツヤ、40代から始まる切実なハリ・コシ不足、そして60代からの深い潤いと巡りのケア――。
それぞれのライフステージで、私たちの体内ではホルモンバランスや代謝の大きな変化が起きています。
今回は、科学的根拠(エビデンス)に基づきながら、今のあなたの髪を支える「本当に必要な成分」を徹底解説します。
この記事を読めば、鏡を見るのがもっと楽しみになり、毎日のヘアケアが自分を慈しむ特別な時間に変わります。
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【基礎知識】なぜ年齢とともに髪は変わるのか?

具体的な成分の話に入る前に、まず「なぜ髪質が変わるのか」というメカニズムを理解しておきましょう。
ここを知ることで、成分選びの納得感が格段に変わります。
髪の寿命「ヘアサイクル」の変化
髪の毛には、生えてから抜けるまでの「ヘアサイクル(毛周期)」があります。
成長期 : 新しい髪がどんどん太く長く育つ時期。通常3〜6年(女性では4〜6年程度)継続します。
退行期 : 毛根が退化し始める時期(約2週間)。
休止期 : 髪が抜け、次の髪を作る準備をする時期(約3〜4ヶ月)。
年齢を重ねると、この「成長期」が短くなり、逆に「休止期」の割合が増えてしまいます。
その結果、髪が十分に太く育つ前に抜けてしまったり、一本一本が細くなったりして全体のボリュームが減ったように感じるのです。
ホルモンバランスと頭皮環境
特に女性の場合、40代を境に急減する「エストロゲン(女性ホルモン)」が髪の健康に深く関わっています。
エストロゲンは髪の成長を助け、成長期を維持する働きがあるため、
これが減ることで髪の寿命が短くなり、細毛や抜け毛に繋がりやすくなります。
また、頭皮は「顔の皮膚」と繋がった一枚の皮です。
加齢とともに頭皮のコラーゲンやエラスチンが減少し、弾力が失われると、毛根へ栄養を届ける血流も滞りがちになります。
20代〜30代:外的ダメージからの「保護」と美髪の土台作り

この世代の悩みは、ヘアカラー、パーマ、アイロン、そして強い紫外線といった「物理的・化学的な外的ダメージ」が中心です。
まだ「生やす力」は十分にあるため、いかに今ある髪を「守り」、未来の健康な髪のために「体内の土台」を整えるかが鍵となります。
① 「ケラチン」によるキューティクルケア
髪の約80〜90%は「ケラチン」というタンパク質でできています。
ダメージを受けた髪は、表面のキューティクルが剥がれ、中の成分が流れ出している状態です。
薬剤師のアドバイス:
シャンプーやトリートメントに含まれる「加水分解ケラチン」などの成分は、髪を内部から完全に修復するものではありません。
あくまで剥がれたキューティクルの隙間を埋め、表面をコーティングすることで、指通りを改善し、さらなるダメージを防ぐ役割を担います。
期待できる効果:
適切に配合された製品を使用することで、髪の表面が整い、指通りが改善される場合があります。
② ビオチン(ビタミンB7)への正しい理解
SNSなどで「飲むだけで髪が伸びる」と話題になることもあるビオチン。
しかし、事実は少し異なります。
エビデンスの視点:
科学的には、健康な人がビオチンを過剰に摂取したからといって、髪が爆発的に増えるという明確な証拠はありません。
必要なケース:
ビオチンはタンパク質の代謝を助ける酵素の働きをサポートします。
不規則な食生活が続いている方や、偏ったダイエットをしている方が、不足分を補う目的でサプリメントを活用するのは、栄養補助として有効な選択肢です。
③ 酸化ダメージを防ぐ「抗酸化ビタミン」
外回りの仕事やアウトドアが好きな方は、頭皮の「酸化(サビ)」に注意が必要です。
紫外線は頭皮にダメージを与え、将来の薄毛の原因になる「活性酸素」を発生させます。
注目成分:
ビタミンC、ビタミンE。
取り入れ方:
これらは抗酸化作用を持ち、頭皮の健康維持を助けます。
食事で赤パプリカやナッツ類を意識的に摂ることは、未来の美髪への投資になります。
40代〜50代:ハリ・コシの変化に寄り添う「頭皮ケア」

多くの女性が「髪の変化」を最も実感するのがこの時期。
更年期に伴うホルモンのゆらぎにより、髪が細くなったり、うねりが出やすくなったりします。
① 女性ホルモンをサポートする「大豆イソフラボン・エクオール」
女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、相対的に体内の男性ホルモンの影響が強まり、髪の成長バランスが崩れやすくなります。
成分の働き:
大豆イソフラボンは化学構造がエストロゲンに似ており、更年期症状の緩和への効果が期待されています。
特に、腸内でイソフラボンが変換されてできる「エクオール」は、より高い活性を持つことが知られています。
薬剤師の視点:
髪のハリ・コシへの直接的な効果を断言するにはまだ研究段階ですが、更年期の全身的なケアを行うことで、間接的に頭皮環境を良好に保ち、髪の健康をサポートする可能性があります。
② 地肌を潤す「コラーゲン・ヒアルロン酸」
40代以降、頭皮の水分保持能力は低下しやすくなります。
頭皮が乾燥して硬くなると、血流が悪くなり、健康な髪が育ちにくくなります。
外からの保湿:
これらは経口摂取よりも、頭皮用の美容液(スカルプエッセンス)などで直接保湿することが有効です。
地肌に潤いと弾力を与えることで、毛穴の形を整え、根元から髪が立ち上がりやすい環境を作ります。
60代〜70代以上:血行促進と「巡り」の慈しみケア

この世代では、頭皮の血流を良くし、毛根に栄養を届ける「巡り」のケアと、減少した皮脂を補う「保護」が最優先事項になります。
① 育毛成分の定番「センブリエキス」
多くの育毛剤に配合されているセンブリエキスは、伝統的かつ信頼性の高い成分です。
効果:
センブリエキスには末梢血管を拡張し、血行を促進する働きがあります。
これは医薬部外品の有効成分としても認められており、滞りがちな頭皮の血流をサポートするのに適しています。
塗り方のコツ:
塗布する際に、指の腹で優しく揉み込むようなマッサージを併用すると、物理的な刺激との相乗効果が期待できます。
② 天然オイルによる「艶の保護」
皮脂の分泌が少なくなると、髪は乾燥して広がり、パサつきが目立ちます。
おすすめ:
椿油やアルガンオイル。
注意点:
これらは良質な脂質ですが、頭皮へ過剰に塗布すると、毛穴詰まりやベタつきの原因になることがあります。
使い方:
髪を洗った後、タオルドライした毛先を中心に少量を馴染ませるのが上品なツヤを出しつつ頭皮トラブルを防ぐ賢い方法です。
薬剤師が教える!成分の力を最大化する「ヘアケア新常識」

高価なシャンプーやサプリメントを使っても、基本の習慣が間違っていては宝の持ち腐れです。
質の高い睡眠:22時ゴールデンタイムはもう古い?
かつては「22時〜2時がゴールデンタイム」と言われていましたが、現代の睡眠医学ではこれが否定されています。
大切なのは「何時に寝るか」ではなく、「入眠直後の深い睡眠(ノンレム睡眠)」です。
このタイミングで成長ホルモンが最も多く分泌されます。
寝る直前のスマホを控え、リラックスした状態で眠りにつくことが髪の修復には不可欠です。
鉄分と亜鉛の重要性
髪の毛を組み立てるためには、材料(タンパク質)だけでなく「大工さん(亜鉛)」と「運搬係(鉄分)」が必要です。
☆ 鉄分:
酸素を運び、細胞の活動を支えます。
鉄欠乏は抜け毛の大きな原因の一つです。
☆ 亜鉛:
タンパク質の合成に不可欠です。
ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まります。
シャワーの温度は「38℃前後」
熱すぎるお湯は、髪を保護している必要な脂質まで流し去ってしまいます。
少しぬるいと感じる38℃程度が、頭皮のバリア機能を守り、乾燥を防ぐためのベストな設定です。
まとめ 今のあなたを肯定し、寄り添うケアを

ヘアケアに「これさえやれば一生安心」という魔法の成分はありません。
しかし、自分の年齢や体調の変化を正しく理解し、根拠のある成分を選ぶことで髪のポテンシャルを最大限に引き出すことは可能です。
・ 20代〜30代: 表面の保護とダメージ予防。
・ 40代〜50代: ホルモンバランスを意識した内外面からのサポート。
・ 60代〜: 血行促進と適切な油分補給。
「もう年だから……」と諦める必要はありません。
もし抜け毛や細毛が急激に進んで不安な場合は、特定の成分に頼りすぎず、まずは皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。
その上で、日々のケアに迷った時は、私たち薬剤師にぜひご相談ください。
あなたの「今」にぴったりのケアを、一緒に見つけていきましょう。
【参考文献・参考資料】
- 日本皮膚科学会:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
- 厚生労働省:e-ヘルスネット「栄養素と健康」および「睡眠のメカニズム」
- NIH(アメリカ国立衛生研究所):Biotin – Health Professional Fact Sheet
- 大塚製薬:エクオールに関する臨床研究(閉経後女性の毛髪老化抑制に関する報告などを参考)